レンズの収差について

理想のレンズとは…

理想のレンズとは…「どのような場合にも物体の1点から発せられた光線がレンズを通過後に完全に像点として1点に集光できるレンズ。」と、定義できますが、今日までこのような理想のレンズは作られたことがありません。

現実のレンズには理想光学からのズレがあり、そのズレ(誤差)のことを収差といいます。

その収差は以下のように分類されています。

 

1.サイデルの5収差

1.球面収差…口径の違いによる焦点位置の違い

光線がレンズの中心を通るか、周辺部を通るかによって、1点から出た光はわずかに異なる位置で集光するために起きる収差。 (球面の断面をもつレンズには必ず球面収差が出ます。)

しかし、眼鏡レンズの場合はレンズ全面ではなく瞳孔径(最大でも約6mmと小さい)で口径が決まるため、球面収差が問題になることはほとんどありません。

 

2.歪曲収差…口径に正比例しないプリズム作用

歪曲収差のあるレンズを通して正方形を見るとその像は図のように歪んで見えます。

 

そもそもレンズはプリズムの集合体ですが、現実には光学中心から離れるほどプリズム量が大きくなるためこのような歪曲が起こってきます。

球面設計の眼鏡レンズにはこの歪曲収差が存在します。

 

3.コマ収差…レンズの傾きによる像の流れ

レンズに対して、斜めに入った光線が、図のように1点で集まらず、上下非対称に像が乱れる現象をいいます。

コマ収差があると、光軸外の1点は尾を引いた彗星のような形の像になります。

カメラレンズのコマ収差は、図のように斜め入射の光線により像が流れてしまう収差で、球面収差が形を変えたものと考えられます。

したがって、球面収差が改善されれば、コマ収差も同様に軽減されます。一方、眼鏡レンズのコマ収差は視線とレンズ面が直交していない事が原因のため、浅いカーブのレンズ周辺部が問題となってきますが、実際は球面収差と同様に、瞳孔径が小さいためコマ収差が問題となることは少ないようです。

 

4.湾曲収差…中央と周辺の焦点位置の違い

湾曲収差があるレンズでは、平面上にある物体が、平面上に結像しない。

 

カメラレンズでは焦点位置=結像位置=像面であり、この像面が理想の像面です。

写真フィルムの平面上に一致すれば、隅々までピントのあった写真となります。

湾曲収差はこの像面の湾曲を意味しますが、眼鏡レンズの場合、この湾曲収差の考え方はカメラレンズと異なります。

眼鏡レンズの周辺部を通して物を注視するときには眼球が回旋するため、無限遠方の物体に対する理想の像面は眼球回旋点を中心とした球面上になります。

眼鏡レンズでは、この理想の像面である球面からの像点のズレを湾曲収差として扱うよりもレンズの周辺部を通して見たときの視線上のパワーエラー(度数誤差)として扱われることが多く現実的です。

非球面レンズや累進レンズの設計では、このパワーエラーが改善の対象になります。

 

5.非点収差…方向による焦点位置の違い

非点収差のあるレンズでは、光軸を外れた部分を通過する光線は像点として一点に集まらず、その像は、レンズからの距離によって、楕円になったり、円あるいは線になったりする。

図:Wikipediaより

レンズ中央において「方向による焦点位置を意図的に変えた」レンズを乱視レンズと呼び、非点収差があるとは言いません。

眼鏡レンズにおける非点収差とは、強度レンズの側方部を見たときなどに発生する不要な乱視状態の収差のことです。

 

2、色収差

レンズの材料となる透明媒質の屈折率は光の波長(色)によって異なり、これが原因となって、光の色によって異なる像を結びます。

この色のよって異なる像を結ぶ収差を色収差という。

色収差には、色の違いによる光軸上での像の位置のズレとしてとらえた「軸上の色収差」や色の違いによる像の大きさの違いとしてとらえた「倍率の色収差」などがあります。

図のように「倍率の色収差」も「軸上色収差」も同じ収差の表現を変えただけです。

屈折検査で用いられるレッド・グリーンテストは眼がもつ「軸上色収差」を利用しています。

これに対し、強度レンズの側方部を通して見たときに生じる色のにじみや像の端が色づいて見える現象は眼鏡レンズがもつ「倍率の色収差」が原因となっています。

 

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